賃貸マンションと聞いて思い出すのが、故・中島らも氏の短編小説「はなびえ」だ。主人公は、調香師として長年のキャリアをもつ30代の女性。ある日、転居のために不動産業をしている元カレの男性に新しい住処のあっせんを依頼する。元カレが紹介してくれたのは広いバスルームのあるマンションで家賃はびっくりするほど安く、女性は即決した。新しい部屋でのびのび過ごす彼女だが、ある時から、バスルームから聞こえてくる怪しい水音に怯えるようになる。じつはその水音は、元カレのかつての浮気相手に関係していた。浮気相手の女性は、元カレにふられたはらいせにその部屋で命を絶っていた…。ここでキーとなるのは主人公の女性が調香師であるということです。仕事がら、臭気に異常なほど敏感な彼女が水音とともに夜毎バスルームから漂ってくるある「臭い」に気づいてしまったことから…。オチはその臭いと関係しています。読んだあと、ほんのちょっと食欲がなくなる(かもしれない)短いけれど非常に印象的な一作です。